漢方の話

漢方は患者さんの体質から病気を治す医療です.

西洋医学とは全く違う方法で診断します.例えば舌,腹,脈を診ます.

西洋医学では痛みには短絡的に鎮痛薬ですが,漢方では疼痛の原因である身体内面のゆがみを整えます.


陰と陽

漢方では活動的な状態を「陽」,休息的な状態を「陰」といい,陰陽のバランスが健康には重要と考えます.

また,体力がある状態を「実」,体力がない状態を「虚」といい,同じ病名でも虚実の違いによって漢方薬を使い分けます.

病気の部位だけにとどまらずに,患者全体の陰陽虚実を見極めて治療する事が重要です.


陰陽と不眠

1日のリズムを考えると,活動的な日中は「陽」,休息する夜間は「陰」です.日中の燦々とした太陽が「陽」,夜間静かに寂光をたたえる月が「陰」と考えるとわかりやすいと思います.

人は日中「陽」夜間「陰」のリズムを繰り返しています.不眠は夜間になっても「陽」の状態が続き,「陰」に移行できないために生じます.

陽を鼓舞するアルコールは,飲み過ぎると夜中に何回も目覚めたり夢ばかりみたりと夜間の陰への移行を阻害します.「寝酒は睡眠の質を落とす」といわれる所以です.

ゆったりと湯につかるのは陰への移行を助けますから,入浴は寝る前に長めにのんびりと行うのが良いでしょう.陽を活性化するパソコンやスマホは当然入眠を妨げるので,寝る前は避けた方が良いでしょう.

陰への移行を助ける漢方薬は,身体の内面から眠れるようにします.睡眠薬のように効き過ぎたり癖にならないのが利点です


自律神経と陰陽

よく自律神経失調症という病名を聞きます.何かの症状があって検査しても異常が見つからない事も多く,その時医師はこの病名を使います.

自律神経には活動的な「交感神経」と休息的な「副交感神経」があり,両者のバランスが重要です.これが乱れた状態が自律神経失調症です.

これは漢方の陰陽と同じ事で,交感神経が陽,副交感神経が陰に相当します.漢方薬で陰陽のバランスを整えることは,自律神経のバランスの改善につながるのです.